ネットワークのゲンバ ~ShowNetを支えるメンバーたちの奮闘ブログ~
2014/06/10
図面とともにあらんことを!:第二面
賢者とアイツ。
これをお読みのネットワークエンジニアのあなたなら、酒の席で俺サーガとして語り継ぎたくなるような...或いは、記憶の奥底に仕舞いこみつつ、日々の業務で忙殺されているような場面で「でもアレよりはマシやな...」とそっと紐解きたくなるような修羅場の経験などというものを一つや二つはお持ちでしょう。
サポセンの電話が鳴り止まぬような障害の中。客先の電算室のラックの前に座り込み、体力を吸い取っていく寒さと乾燥した空気。電話の向こうにいるエスパーの声をかき消す騒音。そして、精神を蝕んでいく苦情の嵐という三重苦。ここが平和な日本の街の中だとはとても思えないような過酷な環境に精神力のみで耐えながら、半泣きでああでもないこうでもないと思いつく限りのヒールスペルをターミナルに詠唱しつづける。修羅場とはそういうものです。
ネットワークのヒーラー達は、そんな前線で壮絶な試練に耐えながらも〝ゲンバ耐性〟のカケラもないカオスな図面を前に頭を抱え、どうしてこうなった!と呪詛を吐き続けます。そう、例えばこのように――
拝啓。賢者様......伝説の箱の大賢者〝インプ様〟よ......
こんなダンジョンの最深部で、わたくしのような路傍の〝僧侶〟がたった一人、どうすればあなた様からの試練に打ち勝つことが出来るというのでしょうか。
お客様のネットワークがダウンしているとの報せを聞いたのは、そろそろ飲み仲間との約束の時間でした。あと数分で会社から出るところだった...嗚呼、それなのになんてこった!金曜日だからなのか同僚はもう誰も居ない...本気でついてねぇ...そうして不吉な暗雲漂う塔に単騎で足を踏み入れてみると... OMFG!そこは今や、ヘイト値がオフスケールするほどに出来上がったお客様達に生暖かくボックスされる、魑魅魍魎のハードコアダンジョンと化していたのです。
もはや効く相手じゃないことは分かりきってるのに、「わたくしが馳せ参じたからにはご安心を!」なんてマヌーサの術で余計に怒らせながら、箱を片っ端からベホイミするフリなど。実のところ何から手をつけていいのか皆目見当がつかないなんて、口が裂けても言えません。そんな無間地獄のまっただ中に居るわたくしの手には、たった一ページのパワポ。それがもう、萌え上がるほどひでぇ...
大体、どうやって描いたらこんなもの凄い図面になってしまうのか。これを描いた本サイト担当の〝アイツ〟が今ここにいたなら、こんな萌えすぎな図面を完成図書なーんてラベルを打ってドヤ納品するなど、もまえレベルいくつよと問い詰めたい、小一時間問い詰めたい。しかもだ...。ゲンバ検証を進めていくと、箱の型番が図面と激しく違っている。これは明らかに何度も更改されてるはず...そのはずなのに、ファイル名にふと目をやるとそこには不吉な文字が――
rev0.01c-final3-nouhin-ver5.pptx
詰んだ... むしろ見なきゃ良かったとさえ...
そんなノープラン僧侶のアイツは未だに圏外プレイをキメてやがる。
俺たちは独身貴族――そう言えば聞こえはいいが、リア充と違って非モテのルーティングテーブルなんぞたかが数行。社員食堂で交換する LSA に数年変化がないアイツは、おおかた給料日な花金なのをいいことに修羅場アンリーチな例の宿屋で directly connected 祭りでも盛大におっぱじめてやがるんだ。そんなけしからん生臭坊主を頼りにしなけりゃならん事自体が腹立たしいというのに、いい加減無理ゲーな様相を呈してきやがった...。そもそも、コアもエッジもわからん endgame レベルの Raid ダンジョンをソロで攻略とか、出来んのか本当に......おいじいさん、あんたまだ聞いてるかい。一僧侶としてほんと恥ずかしいけど、Internet 開祖の箱。インプ一族伝説の初号機のあんたを祀る UCLA に、未だ参拝してないことを激しく後悔してんだ...
マナゲに居る syslog サーバ〝jiseinoku〟――そのプロンプトを見るたびに、そんなアホな命名をしやがった張本人がそもそも居ねえとかじわじわ頭に来つつも、俺がやるしかないんだ...ひたすらそう念じながら、箱たちの辞世の句を less っていく。すると、UDP にしたためた断末魔の叫びをものの一瞬で /var/log に数千行もしたためながら憤死している本番系。そしてその数秒後に待機系が backup state のままワロスの無理心中。近年まれに見る壮絶な逝きっぷりとか、おめでてぇな。
今やバカみたいに膨れ上がった arpwatch.log へのガサ入れによれば、どうやら事の始まりはサーバセグメントの〝ぐるぐる〟のようだ。それにしても、タイミングがこれ以上ないほど悪い。当然のことながら、彼らにとっても今は花金。顔を真っ赤にした中ボス四天王の最弱様ときたら、さっきから電話口でメダパニばかり連射しやがります...と、そこまではいいでしょう。これもひとえに、わたくし達の日頃の鍛錬不足。それは認めるにやぶさかではありませんよ。が...... SHIT!そのグルグルがなんとマナゲにも驚きの VLAN 横モレ...夜も安心じゃねえのかてめえ...全ての箱のマナゲにラブ注入とかもうね、もはやコンボ障害ってレベルじゃねえ...
――拝啓。不信心な僧侶よ、聞くがよい。わしの末裔の可愛い箱たちを粗末に扱う貴様らに、マナゲなど過ぎたもの。せいぜい背広で床を這いつくばるのがお似合いぢゃ!かかかか!敬具。
はぁ?読めたぜ賢者さんよ...この馬鹿みたいにある箱のうち、どれかの FPGA をハンパに焼いてワイヤレートで盛大に回してんだろう...でもな、せめて壊すんだったらファイも一緒にね?どの箱かさっぱりわからんから。大体あんたの芸は毎回ほんとこまけぇ......ストームコントロールがなんちゃって実装とか、MGMT ポートが驚きの帯域〝内〟とかああもうセコいよセコすぎるよ!誰だよこんなミミック予備軍を大量導入しやがったの!箱になって化けて出てやらあ!......ま、きっとアイツだろ。しかもそんな箱たちも俺の食い扶持の一部だなんてもう、まんま身から出た虫――
――追伸。ストームコントロールなんて、あまえ。
あんたまだいたのか!賢者タイムを満喫しているこの俺の前に、老練のくせに KY 大賢者様はしたり顔でひょっこり登場。ベホマで癒してくれるどころかケチなメダパニを呟いてはまたどっかに消えてく。TCP/IP すら無かった時代の伝説の箱ともなると、小言もファンタジーだぜ...
ともかくまずはグルグル退治からだ。こいつが全ての箱に注入されてるせいで、揃いも揃ってフォワーディングプレーンを発狂させてる上、マナゲへの横モレで CPU がびっちびちに天井に張り付いてて、シリアルですらまともにお話してくれない。グルグル退治の極意は、ツリーの根から一本ずつ抜いて切り分けしていくのが定石...なんだけど、根っこってどれ?それすらわからんとかもうこの図面ときたら、存在そのものがメダパニな代物なのにだよ。あんの野郎、ケーブルタグはおろかテプラのおまもりすら貼ってないなんて、ほんっっと馬鹿じゃないの。せめてルートブリッジさえわかれば、切り分けも楽なはずなのに... サメでパクついた BPDU をチラ見しながらヒモをたぐって次いってみよー!とか何このクソゲー。
そんなクソゲーも、気づけばもう三時...まったくもって、眠い。
アイツとはいずれ決着をつけてやる。そう、俺が無事に生還した暁にはこの大冒険をセーブする〝始末の書.XLS〟の全セルを真っ黒にフラッドしてやる...だからもう腹をくくったぜ。サメキャプゲーもこのへんでお開きにして、いよいよ禁断のプラン B、ブルート・トラシューだ...いいかじいさん、RX をかっぽじいてよおく聞けよ。ここまで俺を追い込んだからには、可愛い箱たちが無差別隔離されていっても文句は言わせねえぜ。そう、ぐるぐる退治で一番確実なのは結局、箱の LED を心眼で睨みつけながらアップリンクポートを淡々と抜いていくこと、それが鉄板なんだ。ここにある全ラックに無造作にマウントされてる箱たちが相手...時間はひたすらかかる......が〝いつか終わりがくる〟それが大事......
アーーーーー!
ちょ、ちょっとまて、嫌なことを思い出して軽く目眩が...。ルイーダの酒場で僧侶仲間と飲んでた時の話だ。ワロス伝説を聞き出そうと自白剤をしこたま注入されたアイツがトイレでコアダンプしてる隙に、同僚から本当のワロス伝説を小耳に挟んだ......あ、ありのまま、聞いたことを話すぜ...
――フロアにも鯖セグ欲しいなんて泥縄要求が上がってきたと思ったら、いつの間にか泥縄対応していた。
な...何を言ってるのかわからねーと思うが、俺もヤツが何をしでかしたのかわからなかった...しかしノープランなアイツだから、およそやりかねない...そう、禁断のタグ引きずり回しのアドホック術を!て、ことはだ。広大なフロアの床下にもミミックがいる可能性があるってこと?嗚呼!もう最悪だわこれ...一体、何部屋あると思ってんだ...
色々終わった...
コマンド一発で済むもんだから、怖いモブに断りの電話で精神修行するより楽だとホイホイ聞いてはそんな細かい妥協を重ね、〝ひとーつ、L2 は最小にすべし〟という我が僧侶ギルド鉄の掟をシカトして無闇に枝を伸ばしまくった結果、起きるべくして起きた超ぐるぐるが広範囲の箱を華麗にワイプ。まだ存命中のサービスのヒモが嫌ほど刺さってるパッチパネルもノーテプラ戦法、とてもじゃないが危なっかしくて触れやしねえ。
いいか?ネットが壊滅状態で仕事にならんのなら普通の会社は全員帰宅だろう。しかし、ここは日本の中枢東京。今週の仕事が終わらんからってこんな時間にもかかわらずローニン様はオフィスに全員着席フルポップで俺の仕事が終わるのを待ってやがる。想像してみて欲しい...苦り切ったコーヒーをがぶ飲みするような怒り狂ったモブ様が二メートル間隔で固定ポップしてるようなアウェイ感たっぷりのオフィスの床板を「ちょっとごめんなさいよー」とひたすらメクりまくるという、にわかに信じがたいクソゲーというものをな...。こんな時こそ MP を温存すべきなのに、体力、精神力共に最も消耗が激しい戦闘しか残されてないなんて、まんま〝Plan B always sucks〟を地で行くぜ...
そう。思えば今頃...俺はルイーダの酒場で僧侶仲間と浴びるほど飲みながら、ステテコルックでふしぎなおどりごっこだったんだ。リレミトの術を持っていたら文字通り飛んでいくだろう。そもそも、こいつらも普段は頼もしい箱なんだ、そのはずなんだ、それが突然フレームをたらふく食い散らかしてはゲロっちまうミミック野郎に大変身とか萌えすぎな上に、こいつらはとにかく寒い所が大好き...そう、とても寒い...そして眠い...
一体どの箱がみみくってんのかさっぱりわからんまま、俺は MP 無限のダイキン様が容赦なく詠唱するヒャダインに晒され続け、自分の HP すらずっと真っ赤、気づけばホイミ一発分すら温存し忘れるとか僧侶廃業レベルの上、ラス一のマナポも尽きてもはや俺のほうがみっくみくにされつつある。世に言うデッド・オア・ダイだ...朦朧としてて自分でも何言ってんのかわからねーが、でももういいんだそんなこと...
そろそろ7時とかな...この障害の状況を俺に詰問するために、休日にも関わらず管理職クラスのボスモブ様がリポップなさる時間だ...下手すりゃ社長のレアポップなどという超展開も有り得る...
このダンジョン最深部で繰り広げられてきた伝説の戦いを、長年壁面から静かに見守ってきた最長老の箱〝主幹様〟が、さっきからつぶらなオレンジの瞳でこちらを見ている、そんな気がするんだ...。いや、仮にだよ。仮に俺が今ここで〝占い師〟に転職できるのなら、その主幹箱に憧れのメガザルをこっそり詠唱、辞表を賭けたサイトワイド電気ショックをがっちゃんこー.........?!あ、いや、まぁ待て。というか、もまえはさっきまであの KY 大賢者とタイマンで反省会してたところだろうが。こんな薄暗い電算室で人知れず棺桶っておまえな、ザオリク要員が真っ先に戦闘不能の挙句にぐるぐる再開の神ワイプとか、そんなニワタマ許されるわけねえだろ...
もっ、もうだめだ!箱の大賢者、インプ様よ!なぜこのような試練をお与えになりやがりますか!これからは箱にテプラのおまもり貼ってちゃんと可愛がります!図面なんてもう超メンテしますから!だから!へぷる!へくぷ!おい聞いてんのかこの冷蔵庫!