ネットワークのゲンバ ~ShowNetを支えるメンバーたちの奮闘ブログ~
2014/06/10
図面とともにあらんことを!:第二面
ShowNet はハードコア Raid ダンジョン。
実際、ネットワークエンジニアの仕事のうち設計や構築のような美味しい仕事は、言ってみればさしたる量ではありません。上記のような修羅場は自業自得ですが、その仕事の多くを占めるのは如何にネットワークを落ちないようにするか、いざ落ちた時のために予めやっておくことは何か、修羅場を少しでも軽くするための細かい下準備だと言えます。
あなたのまわりにいるおじさんの中に口うるさい人がいませんか?「火入れる前にテプラ」「オモテの前にウラ」「つなぐ前に desc」「帰る前に図面」などと。そして、アルコール中の血液濃度が薄まってきたりすると、聞いてもいないのに既に何百回と聞かされたワイプ伝説を語り出します。
「せんせぇな。そんなしょーもないことでボヤいてるけどやで。伝説のラスボス〝イエローケーブル〟を、おまえは知らんのや。あれはワシが駆け出しの頃......」
私が若者だったら、しまほっけの骨を箸でつつきながら心のなかでボヤいてることでしょう。
. . o o O(ログインすりゃ書いてあんねんしテプラなんかいらんやろ...)
. . o o O(足踏んでいきゃどっかから入れんのにマナゲなんかいつ使うねん...)
. . o o O(LLDP 走っとんねんから description なんてめんどいもんを...)
. . o o O(図面なんかまとめて更新すりゃええやん...)
. . o o O(そして伝説へ...)
しかしそのオヤジも、かつてはそんな甘い考えで修羅場に突入して泣いた若者でした。
一体こんなものが何の役に立つんだ?そう思える面倒な仕事の多くは、壮絶な修羅場を闘い抜いた、或いは時にワイプしてきたヒーラー達が賢者タイムで編み出した次善の策であり、修羅場をかいくぐらないとその必要性が感じられないようなものばかりです。図面はそういった仕事の中でも最も面倒なものの一つですから、どこか変なエンジニアでも無い限り普通は嫌がるものでしょう。
このへんでそろそろ白状しますが、ShowNet も図面担当というポジションが無かった時代は、色んな担当が時間を見つけては空いたスペースに描き足していくカオスなものでした。私たちは、そのような図面だけを頼りに戦いに明け暮れていたのです。
箱を相手に戦うことは分かりやすいロールです。ShowNet の本質ですから、自ずと人気もあって人材も豊富です。しかし、自分にしか出来ないロールで戦友へ貢献する方法も、どこかにあるはずです。ShowNet に関わるエンジニアにはそれぞれどこかで抜きん出たタレントを備えていて、それらのシナジーで我々の前に立ちはだかる数々の強敵を討つゲンバを、私は幾度も目撃しました。
ShowNet が、個々が持つ技術を結集させて攻略する Raid ダンジョンだとすれば、まるで看過できません。日夜 MMORPG の Raid に明け暮れつつも、INTEROP の季節になると戦友たちに「ちょっと千葉の Raid に行ってくる。」と断って幕張入りするような STM の若造は、「俺の Raid ロールはコレ」などと決めて、自分の担当だった〝黒箱〟―― Foundry Networks、現 Brocade ――をほっぽり出して、勝手に図面を引き始めました。
図面を引く者一人の片手間仕事で数十人の戦友が苦労する一方、自分だけの苦労で数十人を楽にさせるかもしれない...そんな Raid ロールの可能性に興奮し過ぎたせいで目の前の問題が見えなくなり、同じ黒箱チームだった、後のバーマスター〝たなーん〟に丸投げした結果、彼は十年以上も前のことを未だに酒の席で持ちネタにします。
そういったどこか香ばしい勢いだけで図面担当を始めたものの、図面をやりだした 2001 年のフォルダを怖いもの見たさで覗いてみると、自分を図面担当と呼ばせていた事に恥ずかしくなるほど、本当にお粗末なものです。
よくもまぁこんなお粗末なもので図面担当になれたものですが、NOC の怖いおじさん達はどこの馬の骨とも知れない STM の若造が何やら図面と格闘しとるなぁ... と生暖かい目で見守ってくれました。そうしてバグが摘み取られて成長していく箱のように何年もかけて彼らに揉まれ続け、一定の評価を得るようになりました。すると今度は、それがご来場の皆様にも好評を得るようになりました。
ともするとぞんざいに扱われる図面のような地味なものが〝Show〟の一部として機能するかもしれない――ご来場の方々の声は何よりのモチベーションですから、これにはとても興奮しました。丁度オペレーション用の図面制作のワークフローも完成し、多少の余裕も出てきたため、調子に乗って一般の方々に ShowNet をわかりやすくするため、立体的にディフォルメした概略図も同時進行でやるようになりました。そうして二本の図面を並行で引く〝ハードコアモード〟を 2004 年からはじめると、朝日から逃避するゾンビ化がより進行しました。
それがどのように変化していったのかをご覧ください。
これは 20 周年にあたる 2013 年に作ったものです。ご覧の通り、私が図面をやりはじめた 2001 年頃は目を背けたくなるほどやってはいけない失敗を犯しています。全くお恥ずかしい限りですが、ShowNet が育ててくれた証として楽しんでいただければ幸いです。
ご来場の方に時々「去年と何が違うのかわからない...」というような事を言われてめっきりヘコむ事もあります。構築・運用に携わるような深い関わりがないと違いが分からないということは、私の一番重要なミッションの一方が失敗しているということですから、大いに反省すべきです。実際には、前年に失敗した部分を反省して変更を加えていっているため、一年の差分だけで見ると大して変わっていないように見えてしまうのかもしれません。何年もかけて蓄積してきたものがこの動画で伝われば幸いです。
業務用のソフトウェアである Adobe Illustrator とはいえ、パスの総延長 30m 以上、オブジェクト数 5 千近くを A3 に載せるような用途は全く想定外なのでしょう。だんだん毒が溜まり、再起動を忘れていると何でも無い操作でクラッシュしますし、下手をするとファイルを壊す事もあります。そのような非常事態に備えてファイル名にタイムスタンプを付けて保存するのが癖になっていた事が幸いし、このような動画を作ることが出来ました。
イントロの 1994~2000 年は私のものではありませんので、残念ながら作業履歴も残っていません。特に最初の三年は米国の NOC メンバが中心となっていた時代なので、図面も彼らの手によるものです。また、1997 年と 1998 年の二年分の図面は行方不明で、どういうわけか誰のメールボックスを掘っても出て来ませんでしたので、事務局にアーカイブされている ShowNet Magazine からスキャンしました。
また、2012、2013 年は NOC の〝upa〟君が前半を、後半を私が引き継いだため、途中から人格が変化する様子も見られます。彼はエスパー衆の中でも〝ニュータイプ〟ですが、その恐るべき適応能力もさることながら図面に対するセンスの片鱗が滲み出ています。とは言え、NOC チーム全員をアセットとして考えた場合、彼らのような早熟エスパーを図面というロールに投入するのはあまりにも勿体ない。そこで、STM の若者たちに NOC 図面俺一人部の老朽化と世代交代の必要性を訴え、脈の有りそうなヒーラー見習いを探すことにしました。
まぁ、こんなマゾいことをやりたいなどという者はそうそう現れませんが...