「Engineering a Safer World(STAMP)」翻訳本の紹介とクレーン安全設計の応用事例
『Engineering a Safer World』は、ナンシー・レブソン教授によって執筆された書籍であり、STAMPによる新しい安全工学について、従来の安全工学の課題とともに、なぜ新しい方法論が必要なのかが書かれています。この書籍は、10年以上前に出されたものですが、車の自動運転やAI 技術などソフトウェア集約的なシステムの実用化が進んでいる今だからこそ、この本から学ぶ必要があります。とはいえ、英語による原文からこのような考え方を汲み取るのは時間のかかる厄介な作業です。そこで、システム安全に興味を持つ、企業の経営者やエンジニア、エンジニアではない方も含め幅広い方々に手軽にSTAMPの本質を理解していただきたく、この書籍を日本語に翻訳しました。本講演では、STAMP理論の基盤となっている「システム理論」やそれが生まれた背景と理由、STPAやCASTを用いた安全設計だけでなく、運用後の安全管理まで、システムのライフサイクルを広くとらえた考え方を紹介します。
また、講演の後半では、移動式クレーンの遠隔地操作システムの安全設計へのSTAMP適用の事例についても紹介します。STAMPをどのようにシステム安全設計に組み込むかの実例として興味深く聞いていただけるものと思います。